もしも帝王切開がいいと思ったら‥‥
このテーマは15年くらい前の話で、私が経験したちょっと苦い思い出です。
陣痛って、やっぱり痛いんですよね。
私は、ずっと産婦さんに付き添っていたんですが、その産婦さんは想像以上の陣痛の痛みに耐え切れなくなったんです。
私も、いろいろお産の進行状況とか説明したり、励ましたりしたのですが、もう心をシャットダウンされてしまって、「もう、嫌。切って。先生呼んで」の一点張りでした。
結局、家族もその産婦さんを見てられなくなって帝王切開になったのですが、何となく私もどうしてあげたらよかったのか悩みました。
特に初産婦さんは、時間がかかるのでいつまでこの痛みが続くのか、この状況に我慢できなくなって、逃げ出したくなる人もいます。
気持ちは十分理解できるんです。
その産婦さんと後日話す機会があった時の言葉がとても印象に残っています。
「どうしてもあの時は、我慢できなかった。でも、今考えたらなぜもう少し我慢できなかったんだろうと思うんです。」
「痛みから逃げることだけしか目がいかず、先のことまで考えられなかった」とおっしゃっていました。
帝王切開のリスクは、手術になるので母体に負担がかかりますし、お産後の回復が遅れます。
それと、もし次に妊娠する場合、切迫子宮破裂の可能性が高くなり、帝王切開の場合は三回までの妊娠となります。
そして、赤ちゃんにとっては、産道を通過しないために一過性多呼吸になりやすかったり、母体の常在菌を獲得する機会が減ってしまいます。
帝王切開が必要な場合はもちろんあるので、その場合は仕方ないのですが、経腟で出産できた方がやはり良いです。
妊婦さんと話していると時々こんなことを言われます。
「みんな産んでるし、なんとかなるかな。」
「私の友だちは、みんな安産なんです。」とか
確かに深く考えすぎて、不安になりすぎるのも困るのですが、楽観的に考えすぎるのも困るのです。
帝王切開になってしまった場合、『普通の女性ができることは、私はできなかった』と、後悔や罪悪感を感じる人もいます。
確かにお産は大変で、しんどいことなのですが、自分と向き合ってもらいたいのです。
その時にサポートする家族は、「頑張れ」とつい言いたくなりますが、そればかりだとダメなんです。
十分頑張っているので、やはり頑張っていることに対して、きちんと評価すること。
甘えさせてあげること。
出産する人は、皆この状況を乗り越えているので、産婦さんにも産む力が備わっていること。
頭で考えすぎるとお産は進まないので、成り行きに任せるぐらいの気持ちで焦って結果を求めすぎないこと。
いろんな気持ちが交錯するので、その時に的確なサポートが必要です。
妊婦さん、そしてご家族にもそういうことを少しでも知ってもらいたいと思います。
最期までお読みいただき、ありがとうございました。