助産師のほんわかブログ

日々感じていることや考え方、仕事のことなど、前向きになって、ほんわかできるようなブログにしたいと思っています。

赤ちゃんが産道を通るか否かで、将来の健康問題に影響及ぼす??

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少し前ですが、2014年に「マイクロバース」という細菌学、免疫学、遺伝子学からアプローチしたイギリスのドキュメンタリー映画が上映されました。

 

現代は、医学も発達し人類はより健康になれたはずなのに、現実には病気で苦しむ人々がたくさんいます。

糖尿病や肥満などの生活習慣病、喘息やアレルギー、精神疾患やがんなどの慢性疾患、新型の感染症の発生と大規模な流行などがあり、医療費はかさみ続けています。

 

WHO(世界保健機関)は、慢性疾患の主な原因として、喫煙・飲酒・食習慣・運動不足を挙げていますが、もしかしたら、この4つ以外に重大な要因があるのではないかと科学者が仮説を立てています。

 

その新たな視点というのが、私たちの体内微生物の多様性に関わることで、そのカギを握るのが、出産時のケアではないかということです。

 

人の細胞数が10兆個であるのに対し、体内の微生物は100兆個で、腸内には1000種類、口腔内に700種類、膣内に300~400種類、皮膚にも700種類の微生物が住んでいます。

(人の細胞数については、60兆個と今まで言われてきましたが、数年前に37超個だとも言われています。)

 

この多様性こそが、人の免疫系をはじめとする健康を保つバランスに大きく関わり、人体を守っています。

 

しかし、現代人は、強力な消毒や殺菌剤を日常で使い続けたり、抗菌薬の使い過ぎ、少子化などで、この多様性が本来の3分の1まで減っているそうです。

 

例えば、経腟分娩の場合には、赤ちゃんが母親の膣を通過する時に母親から微生物を獲得するのですが、帝王切開では、このプロセスが行われません。

手術のために抗菌薬を使い過ぎている可能性もあります。

 

また、母乳哺育や肌と肌とを密着させた母子接触なども母親から赤ちゃんへの微生物の受け渡しの機会ですが、ミルクや母子分離では、その機会を逸してしまい、赤ちゃんの免疫系が十分に発達しないのではといっているのです。

 

そのため、帝王切開で生まれた赤ちゃんに、母親の膣分泌物を綿棒のようなもので赤ちゃんの体に塗布する取り組みをしているとのことでした。

 

もちろん、赤ちゃんがしんどくなり、早く手術で出産した方がよい場合や、逆子の場合など、帝王切開のほうが良い場合もあります。

しかし、自然に産まれるということは、赤ちゃんやお母さんにとって、やはり理にかなっているということです。

 

不必要な帝王切開がなくなり、もし帝王切開になった場合でも、積極的に赤ちゃんとお母さんの肌と肌が触れ合えるような母子接触や、母乳育児が広がって欲しいと願わずにはいられません。

 

お読みいただきありがとうございました。